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千葉地方裁判所 平成5年(ヲ)2199号 決定

申立人(債務者)

富永滋

申立代理人

中川潤

主文

当裁判所が、当庁平成五年(ケ)第二八〇号不動産競売事件において、別紙物件目録一記載の土地建物につき、同年八月二日にした不動産競売開始決定は、これを取消す。

理由

1. 申立人は、主文と同旨の決定を求め、その申立の理由は、別紙「執行異議の申立」記載のとおりである。

2. 本件記録によれば、次の事実が認められる。

(1)  相手方は、昭和六二年一〇月五日付けで、別紙物件目録二記載の土地(以下「小金井物件」という。)について所有権移転登記を経たが、当時、小金井物件には、別紙登記目録二記載の登記がなされていた。

(2)  申立人所有の別紙物件目録一記載の土地建物には、別紙登記目録一記載の登記がなされている。

(3)  小金井物件は、平成元年八月二九日、東京地方裁判所八王子支部で競落され、同年一一月二八日、別紙配当表のとおり配当が行なわれた。

3. 相手方は、上記2の(3)の競売の結果、訴外株式会社埼玉銀行及び訴外中小企業金融公庫に対する被担保債務が弁済されたことにより、訴外株式会社埼玉銀行及び訴外中小企業金融公庫に代位して、本件競売申立をしたものである。

4. そこで判断するに、抵当権の目的である不動産を第三者が取得し、その後債権者に対して被担保債務を弁済した場合には、その第三取得者は、民法五〇一条但書一号、二号及び五号の法文及びその趣旨に照らし、物上保証人に対して債権者に代位することができないと解するのが相当であり、このように解しても、上記不動産の第三取得者は、その不動産に抵当権が設定されていることを知りながらこれを取得するのが通常であって、債務者又は自らが被担保債務を弁済しない限り抵当権が実行されることを当然に覚悟すべきものであるし、また、第三取得者には、代価弁済又は滌除という保護制度を利用する方法も認められていることから、第三取得者に不測の損害を与えることにはならないというべきである。

したがって、本件においても、相手方は、物上保証人である申立人に対して、債権者である訴外株式会社埼玉銀行及び訴外中小企業金融公庫に代位することはできないといわなければならない。

5. 以上によれば、申立人の本件申し立ては理由があるのでこれを認容し、主文のとおり決定する。

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